GAME STEP
PERSONAL ESPORTS COACHING 無料相談する 無料相談 →
BLOG 悩み解決 2026.09.07 READ 12 MIN

ゲームの反応が鈍いと感じたら。運動を6週間試した83名の記録

こんにちは、GAME STEP編集部です。

プレイを始めて2時間もすると、反応が追いつかなくなってくる。若い頃はこんなことなかったのに、と感じている方は少なくないと思います。

原因を年齢や才能に求めたくなるところですが、ある研究チームが手を入れたのは、そのどちらでもありませんでした。手を入れたのは、ゲームをしていない時間のほうです。

運動する習慣が無い人たちを集めて、片方のグループだけ体を動かしてもらう、という試験です。

夜、ようやく自分の時間になってランクに入る。最初の1時間は悪くない。

崩れてくるのは、そのあとです。撃ち合いの初弾が一拍遅れる。引くべき場面で足が止まり、気づいたときには囲まれている。同じことを、若い頃はもっと長く続けられた気がする。 こう感じたことはないでしょうか。

反射神経が落ちた。集中が続かなくなった。だいたいそのあたりに落ち着きます。

2025年に、その手前にあるものを調べた試験が発表されました。運動する習慣が無いFPSプレイヤー83名を無作為に2つのグループに分け、片方だけに週3回・6週間の運動をしてもらった、という内容です。ゲームの練習量は、どちらのグループも変えていません。

読み進める前に、当てはまるものがあるか見てみてください。

  • プレイの後半になると、判断の速さが目に見えて落ちる
  • 一日の終わりにゲームをすると、疲れが残ってうまく寝つけない
  • 運動はしたほうがいいと分かっているが、ゲームの時間を削りたくない
  • 反射神経は年齢で決まるものだと思っている

この研究では何を調べたのか

この試験を行ったのは、香港中文大学を中心に、中国・マカオ・アイルランドの研究者が加わったチームです。スポーツ医学の専門誌 Sports Medicine - Open に2025年に掲載されました。資金提供は受けていないと明記されています。

選考を通ったのは86名。1名が個人的な理由で辞退し、2名と連絡が取れなくなったため、最終的に解析されたのは83名です。運動する群が41名、何もしない群が42名になりました。

参加の条件は3つです。

  1. 直近6か月で、FPSを週2回以上・週5時間以上プレイしていること
  2. 健康で、体力測定や運動に問題がないこと
  3. 計画的な運動が週2回未満であること(=運動する習慣が無い人)

参加者は18歳から29歳。男性がおよそ83%を占め、週のゲーム時間は平均8時間台でした。

条件の3番目が、この試験の骨格です。集めたのは「疲れている人」でも「成績が落ちた人」でもなく、運動していない人でした。

運動する群がやったのは、週3回・6週間、1回26分の運動です。中身は次のようになっています。

  • 準備運動とストレッチに3分
  • 最大心拍数の80〜90%で1分間を10本。1本ごとに、40〜50%まで落とした1分間の回復をはさむ
  • 整理運動に3分

何もしない群は、普段どおりの生活を続けました。にせの運動をさせたわけではありません。

最大心拍数とは、その人の心臓が1分間に打てる回数の上限のことです。運動の強さを決めるとき、その何パーセントにあたるかで表すことがよくあります。

体感に置き換えると、80〜90%は息が上がって会話が続かないくらい、回復にあてた40〜50%はゆっくり歩くくらいにあたります(この言い換えは編集部によるもので、論文の記述ではありません)。

成績の測り方は、エイム練習ソフト Aim Labs の3課題です。

  • フリッキング: 格子状に出てくる的を、素早く正確に撃つ
  • トラッキング: 動き回る球に照準を乗せ続ける
  • 意思決定: 赤か青で出てくる的に対して、撃つかどうかを判断する

各課題は60秒。慣れの影響を減らすため、本番の前に練習を1回はさみ、本番は2回やって良いほうを記録しています。あわせて、反応時間・作業記憶・精神的タフさ・自己調整・体力(最大酸素摂取量)・睡眠の質も測りました。

割り付けは無作為化ツールで行い、研究に関与しないスタッフが担当しています。測定する側も、参加者がどちらの群かを知らされていません。

研究で分かったこと

運動した群だけ、6つの指標がそろって上がった

6週間後の数字を並べます。

指標運動した群何もしない群
フリッキング137.90 → 160.48139.51 → 141.90(差なし)
トラッキング43.20% → 48.72%差なし
意思決定77.03 → 85.14差なし
射撃精度88.30% → 91.80%差なし
反応時間548.50ミリ秒 → 503.83ミリ秒差なし
作業記憶5.82 → 6.55差なし

統計的に有意とは、偶然だけでは説明しにくい差が出た、ということを表す言い方です。逆に「有意な差はなかった」は「差がないと確かめられた」という意味ではなく、「今回のデータでは差があるとは言い切れなかった」という意味になります。

判定に使うのが p値で、「その差が偶然だけで出る確率」の目安にあたります。0.05を下回ったら有意として扱う、という慣習で運用されています。

運動した群は6つすべてで統計的に有意な変化があり、何もしなかった群はどれも有意な変化が確認されませんでした(いちばん惜しかった反応時間で p=0.071)。

※ 論文はこの変化を「16.4%の向上」のように書いていますが、これはもとの値からの相対の伸びです。たとえばトラッキングは43.20%から48.72%へ動いており、差は5.5ポイントであって12.8ポイントではありません。パーセントで測っている指標では、ここが混ざりやすいところです。

いちばん分かりやすいのは反応時間で、44.67ミリ秒短くなりました。0.045秒ほどです。

何もしなかった群は、6週間のあいだ普通にゲームを続けています。それでも数字は動きませんでした。ゲームを続けるだけでは、この6つは上がらなかったということになります。

体力が伸びた人ほど、反応も速くなっていた

運動した群は、体力の指標(最大酸素摂取量)が28.44から33.81へ上がりました。何もしなかった群は28.66から28.42で、ほぼ動いていません。

そして、体力の伸びが大きい人ほど、反応時間の短縮も大きいという関係が確認されました(相関 マイナス0.432)。

運動した人全員が同じだけ速くなったのではなく、体力が動いた人ほど反応も動いていました。 ただしこれは関連であって、体力が上がったから速くなった、と示したものではありません。

相関係数は、2つの数値がどれくらい連動して動くかを表す値です。マイナス1から1までの間を取り、0に近いほど関連が弱く、1やマイナス1に近いほど関連が強くなります。プラスなら同じ方向に、マイナスなら反対方向に動く関係です。ここでは「体力が上がるほど、反応時間の数字は下がる(=速くなる)」ので、マイナスの相関になります。

睡眠の質も上がっていた

睡眠の質を測る指標(PSQI)でも差が出ました。運動した群は5.01から4.11へ、何もしなかった群は5.45から5.53です。

この指標は、点が低いほど質が良いという向きで作られています。運動した群は下がったので、改善したという読み方になります。

一方で、メンタルの指標は変わらなかった

精神的タフさと自己調整には、統計的に有意な改善が確認されませんでした。 上がったのは、速さと正確さと記憶と睡眠であって、心の強さではありません。

研究チームはこの点について、運動習慣が無い人に合わせて強度と期間を抑えたため、変化を捉えきれなかった可能性があると説明しています。

精神的タフさは「測らなかった」のではなく、測ったうえで動かなかった指標です。この2つは意味が違います。

eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか

まず、この試験が扱っていない話をはっきりさせておきます。年齢は一度も比べられていません。 参加者は18歳から29歳だけです。「年をとると反応が落ちる」という説を、この研究は肯定も否定もしていません。

そのうえで言えるのは、運動していない状態が、反応の速さに関わっていたということです。参加者はもともと反応が遅かったわけでも、疲れを訴えていたわけでもありません。ただ運動していなかっただけの人たちが、6週間で0.045秒速くなりました。

では、どれくらいの量だったのでしょうか。週3回・6週間で合計18回。1回26分なので、合計7.8時間です。42日で割ると、1日あたり約11分にあたります。ゲームの時間を大きく削る必要はありませんでした。

なぜ効いたのかについては、研究チーム自身も推測にとどめています。体力が上がることで脳へ届く酸素が増えるのかもしれない、ストレスが減って気分が良くなることも関わるかもしれない、脳の成長に関わる物質が増えるのかもしれない、という説明です。この試験はそのどれも測っていません。

改善の中身についても、読み方に注意が必要です。上がったのはエイム練習ソフトの成績と机上のテストであって、実際の試合の勝敗ではありません。それから、精神的タフさは変わっていません。崩れやすさやイライラを運動で解こうとすると、この試験の範囲を超えます。

なお、睡眠と成績の関係については、以前本ブログで紹介した睡眠を削ったときのeスポーツの成績を調べた研究の記事でも扱いました。今回の試験では、運動した群だけ睡眠の質が上がっています。運動と睡眠と反応の速さは、別々の話ではなく、つながっている可能性があります。

実際のプレイ環境にどう取り入れるか

ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。持病のある方、心臓や関節に不安のある方は、始める前に医療機関にご相談ください。

1. ゲームをする日のうち、週3日だけ26分を運動にあてる方法があります

試験の量は週3回・1回26分でした。ゲームの時間を削らずに済ませたい場合は、プレイを始める前の時間を使う方法があります。

2. 強度は「1分だけ息を上げて、1分戻す」を10回で考える方法があります

手段は問いません。走る・自転車・階段の上り下りなど、1分だけ会話が続かない強さまで上げて、1分ゆっくり戻す。それを10本にすると、試験の中身に近い形になると考えます。

3. 最初の2週間は、ゲームの成績を見ないでおく方法があります

この試験が測ったのは6週間後の一点だけで、途中経過は分かっていません。2週目で変化が無くても、それは何も意味していないと考えます。

4. 効いているかどうかは、成績より先に息切れで見る方法があります

体力の伸びと反応時間の短縮に相関が確認されています。同じ運動が前より楽になってきたら、体力の側は動いていると考えます。

ここで少しだけ、コミュニティのお知らせです。
GAME STEPは、無料のDiscordコミュニティ「GAME STEP LAB」を開いています。
コンセプトは「本気でゲームが上手くなりたい人の研究室」。朝のeスポーツニュースの配信や、この記事のような研究解説の新着が流れてきます。
GAME STEP LABに参加する(無料)

この研究から分かること

  • 運動する習慣が無い18〜29歳のFPSプレイヤー83名を、無作為に運動群41名と対照群42名へ分けた
  • 運動は週3回・6週間・1回26分(最大心拍数の80〜90%で1分×10本、あいだに1分の回復)
  • 運動した群は、フリッキング・トラッキング・意思決定・射撃精度・反応時間・作業記憶の6つすべてで統計的に有意に改善した
  • 反応時間は548.50ミリ秒から503.83ミリ秒へ、44.67ミリ秒短くなった
  • 何もしなかった群は、6つのどれでも統計的に有意な変化が確認されなかった
  • 体力(最大酸素摂取量)は28.44から33.81へ上がり、睡眠の質の指標も5.01から4.11へ改善した(この指標は低いほど良い)
  • 体力の伸びと反応時間の短縮に、中くらいの相関が確認された(マイナス0.432)
  • 精神的タフさと自己調整には、統計的に有意な改善が確認されなかった

この研究だけでは分からないこと

論文の最後には、この試験でできなかったことが4つ並んでいます。

  • 人数が比較的少なく、トップのプロ選手と女性の代表性が無い
  • 運動する習慣が無い人だけが対象で、すでに運動している人が同じように反応するかは分からない
  • 体力の測定は代替の方法を使っており、一部の指標は自己申告に頼っている
  • 期間が比較的短い

そこに書かれていないところでも、注意して読みたい点が3つあります。

参加者の盲検化はされていません。 測定する側は群を知らされていませんが、参加者自身は自分が運動した側かどうかを当然知っています。何もしなかった群には、にせの運動さえ用意されていません。「運動したから良くなるはずだ」という期待が結果に混ざっている可能性を、この設計では切り分けられません。

ただし「慣れ」だけでは説明がつきません。 6週間後に同じ課題をやれば慣れる、という説明は成り立ちそうに見えますが、何もしなかった群も同じ回数だけ課題をやっていて、そちらは伸びていません。

年齢は比べられていません。 参加者は18歳から29歳のみです。この記事の冒頭で触れた「若い頃はこうじゃなかった」という感覚に、この研究は直接答えていません。答えているのは、年齢とは別に、運動していない状態が関わっていたというところまでです。

まとめ

運動する習慣が無いFPSプレイヤーが週3回・6週間動いたところ、反応時間が0.045秒短くなり、エイム課題の成績も作業記憶も睡眠の質も上がりました。同じ期間、普通にゲームを続けただけの群は動いていません。

やることは1つです。息が上がる1分と、休む1分を10回。週3日だけ。 1回26分なので、ゲームの時間は削らずに済みます。

GAME STEPが考える「上達の仕組み」

GAME STEPは、上達を「才能や気合」ではなく「環境とルールの設計」の問題として扱う、eスポーツの個別コーチングサービスです。
停滞や伸び悩みに悩むプレイヤーに向けて、90分のマンツーマンセッションと、日々のチャット相談・宿題の設計で上達を伴走しています。

反応の速さを「もともとの資質」として諦めるか、「動かせる条件」として扱うかで、次にやることが変わります。動かせる条件だと分かれば、そこは設計の対象になります。GAME STEPのコーチングが立っているのも、同じ考え方の上です。
体の側から成績を見た記事は、睡眠を削ったときの成績を調べた研究にもあります。

気になった方への入口は3つあります。

  • どんなサービスかをまず知りたい方は、GAME STEPのトップページをご覧ください
  • 直接話を聞いてみたい方向けに、無料相談(20〜30分・オンライン)を用意しています(入口はこのすぐ下にあります)
  • 自分がどの情報を見落としやすいタイプかを知りたい方は、3分で終わる無料のプレイスタイル診断(Style Scan)をどうぞ

※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。ここで紹介した運動は息が大きく上がる強度のものです。持病のある方、心臓・血圧・関節に不安のある方、妊娠中の方、長く運動から離れていた方は、始める前に必ず医療機関にご相談ください。

参考文献

  1. Tang, D., Zhang, X., Ho, R. W.-K., Choi, S. M., Ye, Z., Campbell, M. J., & Sum, R. K.-w.(2025). “Effect of Physical Exercise on Esports Performance in First-Person Shooter Gamers: A Six-Week Randomized Controlled Trial” Sports Medicine - Open, 11:162. doi.org/10.1186/s40798-025-00970-2
  2. Smithies, T. D., Toth, A. J., & Campbell, M. J.(2024). “The effect of sleep restriction on esports performance” Nature and Science of Sleep. doi.org/10.2147/NSS.S470105
WRITER
GAME STEP編集部

eスポーツ・ゲームに関する研究を、プレイヤーが実際に使える知識へ翻訳して届けています。運営:eスポーツ個別コーチング「GAME STEP」