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BLOG 悩み解決 2026.09.06 READ 13 MIN

ゲームの上達で差がついたのは、100試合をこなした期間だった

こんにちは、GAME STEP編集部です。

休みの日にまとめてランクを回して、平日はほとんど触れない。社会人プレイヤーの多くは、自然とこの形になっていると思います。

まとまった時間が取れる日に集中したほうが、感覚もつながって効率がよさそうに思えます。その感覚が本当かどうかを、同じ試合数のまま「まとめて回した人」と「日を分けて回した人」で比べたデータがあります。

分かれ目になったのは、プレイした時間の長さではありませんでした。

平日は仕事で触れないぶん、休みの日にまとめてランクを回す。3連休なら、初日から一気に20試合。

社会人プレイヤーの練習は、たいていこの形に落ち着くと思います。時間が取れる日に集中したほうが、感覚もつながるし、覚えたことも忘れないうちに使える。まとめてやるほうが効率がいい。 そう感じている方は多いのではないでしょうか。

この考え方を、16万件のアカウント記録で検証した研究が2022年に出ています。League of Legends の新規アカウントについて、それぞれが同じ100試合を「どれくらいの期間をかけて」こなしたかを調べ、最後の5試合の成績と突き合わせたものです。

同じ試合数で比べているので、練習量そのものは同じです。違うのは、それを何日に分けたかだけになります。

次のどれかに手が挙がる方は、この先が役に立つかもしれません。

  • 平日はほとんど触れず、週末にまとめてランクを回している
  • 連休の初日に一気にやって、後半は疲れて雑になっている
  • 数日空けると感覚が鈍る気がして、間を空けるのが怖い
  • 練習量は人より多いはずなのに、ランクが動かない

この研究では何を調べたのか

この研究をまとめたのは、英国のヨーク大学とシェフィールド大学、そしてデンマークの南デンマーク大学の合同チームです。2022年に PLOS ONE で公開されました。

使われたのは、2016年1月21日から11月までの1シーズンぶんの、League of Legends のランク戦の記録です。新しく作られたアカウントを無作為に482,415件集め、そこから条件を満たさないものを外していきました。

  • シーズン中に100試合に届かなかったアカウント
  • 最初の100試合の記録に欠けがあるアカウント
  • 初期レートが既定値でないアカウント
  • 複数のサーバーに記録があるアカウント
  • 900秒未満で終わった試合が含まれるアカウント(誰かが試合を放棄した可能性がある)
  • まったく行動していない試合が含まれるアカウント

残ったのが162,417アカウント。1件あたり100試合なので、1,624万試合ぶんの記録が分析対象になりました。

成績の指標は2つです。

GPM(ゴールド・パー・ミニット)とは、1分あたりに獲得したゴールドの量のことです。League of Legends では、ミニオンを倒したり相手を倒したりして得たゴールドで装備を整えるため、この数字は「試合の中でどれだけ効率よく動けたか」の目安として使われます。

KDA は、(キル+アシスト) ÷ デス で計算される値です。この研究では、デスが0のときに割り算が成立しなくなるのを避けるため、分母を「デス数と1のうち大きいほう」としています。

比べたのは、最初の試合から95試合目までにかかった日数です。この日数が長い人ほど、同じ100試合を長い期間に散らしたことになります。

研究で分かったこと

詰め込んだ人のほうが、最初は成績が高かった

先に、結果の順番をひっくり返しておく必要があります。

分析を始めた時点で、短い期間に詰め込んだ人ほど、最初の成績が高いという関係が見つかりました。かかった日数と最初のGPMのあいだには、マイナス0.295の相関があります。

相関係数は、2つの数値がどれくらい連動して動くかを表す値です。マイナス1から1までの間を取り、0に近いほど関連が弱く、1やマイナス1に近いほど関連が強くなります。プラスなら同じ方向に、マイナスなら反対方向に動く関係を表します。

つまり、詰め込んでプレイする人たちは、もともと上手かった可能性があります。研究チームはこれを「熱心で頻繁にプレイする層を見ていたのかもしれない」と表現し、ランク戦が解禁される前のアンランク戦で、すでに多くの経験を積んでいた可能性を挙げています。

このままでは間隔の効果が見えないため、研究チームは最初の実力をそろえた小さな集団に絞り直しました。 最初の5試合の平均GPMが315から385のあいだだった人だけを取り出すと52,440人。KDAが1.64から2.24のあいだだった人だけを取り出すと17,125人になります。

この研究が比べているのは「上手い人と下手な人」ではありません。スタート時点の実力がほぼ同じだった人どうしを、その後の練習の分け方だけで比べています。

長い期間に散らした人が、最後の5試合で上回った

そのうえで、両端のグループを比べた結果です。

95試合を136日から150日かけた人と、1日から15日で終えた人。この2つのグループの、最後の5試合(96試合目から100試合目)の成績が次のようになりました。

指標136〜150日かけた人1〜15日で終えた人
GPM399.71392.816.91
KDA3.763.270.49

GPMの差は6.91(95%信頼区間 3.74〜10.07、p<0.001)、KDAの差は0.49(95%信頼区間 0.28〜0.71、p<0.001)。どちらも統計的に有意な差でした。

統計的に有意とは、偶然だけでは説明しにくい差が出た、ということを表す言い方です。逆に「有意な差はなかった」は「差がないと確かめられた」という意味ではなく、「今回のデータでは差があるとは言い切れなかった」という意味になります。

95%信頼区間は、本当の差がだいたいこの範囲に収まるだろう、という推定の幅のことです。幅が広いほど、差の大きさをまだ絞り込めていないことを表します。

GPMで6.91、KDAで0.49。同じ100試合をこなした人どうしの差です。試合数を増やしたわけでも、実力の高い人と比べたわけでもありません。

研究チームは、この差を実際のプレイに置き換えた場合の目安も書いています。今回のデータでは試合がおよそ33分だったので、100試合目の時点で、最も間隔を空けた人は詰め込んだ人より1試合あたり平均228ゴールド多く稼ぎ、KDAが0.49高い計算になる、という説明です。

ただし、差はとても小さい

ここは正確に書いておく必要があります。

効果量(差の大きさを表す値)は、GPMで0.146、KDAで0.265でした。研究チーム自身が「小さい効果量ではあるが」と断りを入れています。

効果量とは、差が統計的に確からしいかどうかとは別に、その差がどれくらい大きいかを表す値です。データの数が多いと、ごく小さな差でも統計的に有意になります。だから「有意だった」だけでは足りず、効果量を見ないと実感に近い判断ができません。

全員を機械学習で4つのプレイ間隔のパターンに分け直した比較でも、差は統計的に有意でしたが、効果量は「無視できる大きさ」と論文に書かれています。回帰分析でも、間隔だけで最終成績を説明できる割合はGPMで0.5%、KDAで0.3%にとどまりました。

間隔と成績のあいだに関連はありました。ただし、間隔だけで成績が決まるわけではありません。 残りの99%以上は、別の何かで決まっています。

休みの時期が早いか遅いかは、最終成績と関係していなかった

実務に効く結果が、もう1つあります。

機械学習で分けた4つのパターンは、休みの時期が比較的早いほうか遅いほうか、という軸で並んでいました。この4つを比べた結果について、研究チームは「集中的にプレイした時期がいつかは最終成績に影響せず、効いているのは全体としてどれだけ散らしたかのほうだ」と結論しています。

「いつ空けるか」を悩む必要は、この結果の範囲では小さそうです。効いていたのは、全体としてどれだけ散らしたかのほうでした。

eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか

まず、この研究が否定していないことを確認しておきます。

練習量は否定されていません。 全員が同じ100試合をこなしています。「試合数を減らせ」という結果ではなく、「同じ試合数でも、分け方によって最終成績に差が見られた」という結果です。

そのうえで、136日から150日で95試合というのは、どれくらいのペースなのでしょうか。143日で95試合なら、1週間あたり4.6試合。1試合33分として、週に2時間半ほどです。「間隔を空けた人」は、思っているよりずっとゆっくり進んでいたことになります。

逆に1日から15日で95試合というのは、1日に6試合から95試合という密度です。連休に一気に回すペースが、この端にあたります。

もうひとつ、忘れないほうがよいことがあります。間隔を空けた人は、途中までの伸びはむしろ鈍かった、と論文に書かれている点です。最終的に上回ったのであって、最初から良かったわけではありません。間を空けた直後は感覚が鈍って見えるのが自然で、そこで「やっぱり毎日やらないとダメだ」と判断すると、この研究が見ている時間軸には届かないことになります。

なぜ間隔が効くのかについては、この研究は仕組みまで調べていません。効果量の小ささについては、単純な運動課題ほど分散練習の効果が小さくなるという古いメタ分析の結果と合っている、と研究チームは書いています。

練習の設計については、以前本ブログで紹介した練習量とランクの関係を調べた研究の記事でも、「上達のための練習」の量とランクのあいだに統計的に有意な関係は確認されませんでした(Martončik ら 2024)。量そのものが効かないという結果と、量が同じでも分け方で差が出たという今回の結果は、同じ方向を向いています。練習の総量を増やすより、中身と配り方のほうに手を入れる余地がある、という読み方ができそうです。

実際のプレイ環境にどう取り入れるか

ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。

1. 週末の1日にまとめず、2日以上に割る方法があります

同じ10試合でも、土曜に10試合ではなく、土曜5試合・日曜5試合にする。研究が比べたのは数か月単位の間隔ですが、まとめる方向から散らす方向へ動かすという意味では同じ向きだと考えます。

2. 平日に1試合だけ入れる日を作る方法があります

週に4〜5試合というのが、この研究で最も間隔を空けたグループのペースでした。週末だけで完結させず、平日に短く触れる日を1日足す方法があります。

3. 間を空けた直後の1試合で判断しない方法があります

論文には、間隔を空けた人ほど途中までの伸びが鈍かったと書かれています。空けた直後の感覚が鈍いことを先に知っておくと、そこで「毎日やるべきだ」と結論を出さずに済むと考えます。

4. タイミングより回数の散らばりを見る方法があります

集中的にプレイした時期がいつかは、最終成績と関係していませんでした。「朝がいいか夜がいいか」「大会前に詰めるべきか」より先に、1週間で何日プレイしているかを数えてみる方法があります。

ここで少しだけ、コミュニティのお知らせです。
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コンセプトは「本気でゲームが上手くなりたい人の研究室」。朝のeスポーツニュースの配信や、この記事のような研究解説の新着が流れてきます。
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この研究から分かること

  • League of Legends の新規アカウント482,415件から条件で絞り込んだ162,417件、1件あたり100試合ぶんの記録を分析した
  • 95試合を136〜150日かけた人の最終5試合は、1〜15日で終えた人より GPM が6.91高く(95%CI 3.74〜10.07、p<0.001)、KDA が0.49高かった(95%CI 0.28〜0.71、p<0.001)
  • 効果量はGPMで0.146、KDAで0.265。研究チーム自身が「小さい」と書いている
  • 4つのプレイ間隔のパターンで比べた分析でも差は有意だったが、効果量は「無視できる大きさ」だった
  • 間隔だけで最終成績を説明できる割合は、GPMで0.5%、KDAで0.3%
  • 短期間に詰め込んだ人ほど、最初のGPMが高かった(相関 マイナス0.295)
  • 集中的にプレイした時期が「いつ」かは最終成績に影響せず、効いているのは全体の間隔の量だった、というのが研究チームの結論

この研究だけでは分からないこと

この結果をそのまま受け取れない理由を、研究チーム自身が4つ書き残しています。

  • 観察データであり、実験ではない。 参加者の行動を統制できないため、実験室研究のように間隔をそろえた比較はできていない
  • ランク戦の記録しか見えていない。 間隔を空けた人が、その合間にアンランク戦を多くこなしていた可能性は消せない(ただし研究チームは、それなら上達曲線がもっと急になるはずだと反論している)
  • 絞り込みでデータの約3分の2を落としたが、残る交絡はありうる。 1つのアカウントを複数人で使っている場合や、上級者が低ランクを楽しむために作り直した新規アカウントが例として挙げられている
  • アカウントIDは匿名化されており、1つのIDが1人に対応しているとは言い切れない

論文に書かれていない範囲でも、押さえておきたいことが4つあります。

データは2016年のシーズンのものです。 約10年前の記録で、ゲームの仕様も対戦環境もプレイヤー層も変わっています。同じ結果が今も出るかは、この研究からは分かりません。

100試合を完走した人しか入っていません。 482,415件から162,417件まで、約3分の1に絞られています。途中でやめた人・辞めた人は、この数字のどこにも現れません。詰め込んだ結果として離脱した人がいたとしても、その影響はデータに映らない構造になっています。

測っているのはランクではありません。 GPMもKDAも試合の中の指標であって、ランクが上がったかどうかは分析されていません。試合の中で効率よく動けるようになったことと、勝てるようになったことは別です。

比較されたのは両端です。 統計的な差がはっきり出たのは「136〜150日」と「1〜15日」という極端な2グループの比較でした。中間のグループどうしの比較では、差はあっても効果量は無視できる大きさです。「少し間を空けるだけで変わる」とまでは、この研究からは言えません。

まとめ

同じ100試合でも、それを何日に分けたかで、最後の5試合の成績に差がついていました。ただし差は小さく、詰め込んだ人のほうが最初は上で、間隔を空けた人は途中まで伸びが鈍かった、というのが実際の中身です。

今日から変えられるところは1つだけです。週末にまとめて回している方は、同じ試合数を2日に割ってみる。 試合数を減らす必要はありません。減らすのは1日あたりの本数だけです。

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同じ試合数でも配り方で結果が変わるなら、直せるのは配り方のほうです。「もっとやる」で解こうとすると時間がいくらあっても足りませんが、「同じ量をどう配るか」なら、忙しい社会人でも手が届きます。根性ではなく段取りの問題として扱えるかどうかが、続くかどうかを分けると考えています。
練習の量そのものについては、練習量とランクの関係を調べた研究の記事で詳しく書いています。

気になった方への入口は3つあります。

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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。紹介した研究は観察データにもとづくもので、練習の分け方を変えれば成績が上がることを証明したものではありません。実践案の効き方には個人差があります。

参考文献

  1. Vardal, O., Bonometti, V., Drachen, A., Wade, A., & Stafford, T.(2022). “Mind the gap: Distributed practice enhances performance in a MOBA game” PLOS ONE, 17(10), e0275843. doi.org/10.1371/journal.pone.0275843
  2. Martončik, M., Karhulahti, V.-M., Jin, Y., & Adamkovič, M.(2024). “Psychological Predictors of Long-term Esports Success: A Registered Report” Collabra: Psychology, 10(1), 117677. doi.org/10.1525/collabra.117677
WRITER
GAME STEP編集部

eスポーツ・ゲームに関する研究を、プレイヤーが実際に使える知識へ翻訳して届けています。運営:eスポーツ個別コーチング「GAME STEP」