ゲームの休憩は6分歩く。横になって休んだ日がいちばん遅かった
こんにちは、GAME STEP編集部です。
夜のランクを回していると、途中から判断が鈍ってくる感覚があると思います。撃ち合いの読みが遅れたり、味方の位置を見失ったり、そういう時間帯です。
そこで少し休もうと思ったとき、ソファやベッドで横になる方は多いのではないでしょうか。今回取り上げる研究は、まさにその休み方を、別の休み方と直接くらべたものです。
ただ、体を休めたほうが頭も戻るという見立てとは、違う結果でした。
平日の23時、あと1試合のつもりが3試合になって、気づけばプレイ開始から2時間が経っている。
こういう時間帯の負け方には、だいたい共通点があると思います。エイムが急に下手になるというより、判断が一拍ずつ遅れる。詰めるか下がるかを決めるのに時間がかかって、決めた頃には状況が変わっている。
疲れてきたから少し休もう、とスマホを持ってベッドに倒れ込む。5分だけ、と思って横になる。 ゲーム部屋にソファがある方なら、そこに沈み込む形かもしれません。体を休めれば頭も戻るはずだ、という感覚は自然なものではないでしょうか。
2021年に、その「休み方」を3通り用意して比べた試験が発表されています。競技ランクを持つFPSプレイヤーに、2時間のプレイを「休憩なし」「6分歩く」「6分あおむけで休む」の3通りでやってもらい、判断の速さとゲームの成績を測ったものです。
判断の速さは、歩いた日がいちばん速く、横になって休んだ日がいちばん遅い、という順に並びました。
夜のプレイの終盤は、こんな形になっていないでしょうか。
- 疲れを感じたら、ベッドかソファに横になって休む
- 休憩のあいだもスマホを見ていて、目と頭は動かし続けている
- 集中が切れた自覚はあるが、キリのいいところまでと思って止められない
- 休むと逆に眠くなってしまうので、いっそ休まないほうが良いと思っている
この研究では何を調べたのか
紹介するのは、米国のニューヨーク工科大学が実施主体となり、2021年にスポーツ医学の専門誌 BMJ Open Sport & Exercise Medicine に掲載された試験です。
参加したのは、競技ランクを持つFPSプレイヤー21名(男性12名・女性9名)。平均年齢は20.76歳で、7か国から集まっています。参加条件は18〜30歳であることと、FPSのプレイ時間が500時間を超えていること。競技ランクを持っていない人、色覚異常のある人、1年以内に手をケガした人や慢性的な手首の痛みがある人は対象から外されています。
新型コロナの流行下だったため、試験は全員オンラインで行われました。参加者は自分のPC・自分の椅子・自分の机でプレイし、研究者とはビデオ通話でつながっています。3日とも同じFPSタイトル・同じ機材・同じ時間帯で行い、食事の内容と時刻もそろえるよう依頼されました。
一人ひとりが、別々の日に次の3条件をすべて体験します。順番は人によって入れ替えられました。
- 休憩なし: 2時間続けてプレイする
- 6分の歩行: 1時間ほどプレイしたところで席を立ち、平らな場所を6分間往復して歩く。その後またプレイに戻る
- 6分のあおむけ安静: 同じタイミングで、ゲーム環境のすぐそばにあおむけで6分間横になる。その後またプレイに戻る
3番目の条件は「座ったまま休む」ではありません。あおむけで、目は開けたままです。目を閉じさせなかったのは、歩行条件では得られない目の休息を与えてしまわないためだと説明されています。
プレイの前後には、机上の心理テストを2種類受けます。ストループ課題(反応の速さと、余計な情報を抑える力を測るもの)と、Tower of London です。
実行機能とは、目の前の状況に合わせて計画を立てたり、やろうとしていたことを切り替えたり、余計な反応を抑えたりする、頭の司令塔にあたる働きのことです。撃ち合いの最中に「詰める・下がる・回る」を選び直しているときに使われているのが、この働きにあたります。
Tower of London は、その中でも「計画を立てる力」と「言葉を使わない問題解決の力」を測るために使われる課題です(3本の棒に刺さった玉を動かして、見本と同じ形を最少手数で作るパズル)。この試験では、解き終わるまでの時間を「解答時間」、計画にあてた時間を「計画時間」として別々に記録しています。
テストはプレイが終わった直後、席を立たずにその場で受けさせています。
研究で分かったこと
歩いた日が、いちばん速かった
Tower of London の解答時間と計画時間で、3条件のあいだに差が出ました。最も速かったのは歩いた日です。統計的に有意な差でした。
統計的に有意とは、偶然だけでは説明しにくい差が出た、ということを表す言い方です。逆に「有意な差はなかった」は「差がないと確かめられた」という意味ではなく、「今回のデータでは差があるとは言い切れなかった」という意味になります。
3条件の測定値は次のとおりです。値が小さいほど速いことを表します。
| 条件 | 解答時間 | 計画時間 |
|---|---|---|
| 歩いた日 | 7,613.6 | 5,369.0 |
| 休まなかった日 | 8,200.1 | 5,862.7 |
| 横になった日 | 9,477.0 | 6,924.0 |
歩いた日の p 値は、解答時間が0.02、計画時間が0.04でした。ばらつきの大きさ(標準偏差)は、解答時間が順に3,060.5・3,031.6・3,547.4、計画時間が2,802.1・2,860.7・3,247.7です。
※ 単位について編集部注。論文の本文はこれらの値に「min(分)」と添えていますが、測定に使われたのは反応時間をミリ秒単位で記録するソフトであり、分と読むと解答1回に約5日かかった計算になってしまいます。ミリ秒と考えるのが自然なため、本記事では単位を書かず、比較は割合で示します。
歩いた日は、あおむけで休んだ日にくらべて解答時間が19.7%、計画時間が22.5%短くなっていました。休憩なしの日とくらべても、それぞれ7.2%と8.4%短くなっています。
上がったのは「速さ」だけです。Tower of London の正答数、ストループ課題の反応時間と正答率には、統計的に有意な差は確認されていません。判断が正確になったのではなく、判断にかかる時間が短くなった、という結果です。
横になって休んだ日が、いちばん遅かった
測定値の並びを見ると、あおむけで休んだ日が3条件で最も長い時間になっています。休憩なしで2時間通した日のほうが、6分横になった日より数字の上では速い、ということです。
ここは読み方に注意が必要なところだと思います。この試験で統計的に有意だと報告されているのは、歩いた日が速かったことだけです。「休憩なし」と「あおむけ安静」のあいだに有意な差があったとは書かれていません。数字の並び順としてそうなった、という以上のことは、この試験からは言えません。
そのうえで、著者らはこの並びを重く見ています。論文の要点をまとめた欄では「1時間の競技プレイのあとの6分の安静休憩は、選手の実行機能の速さを下げた」と書き、考察では「安静休憩は選手にとってマイナスになりうる」と述べています。
本人たちの感想も、この方向とそろっていました。安静休憩をマイナスだと答えた人は、眠くなった・だるくなった・動きが鈍くなった、と説明しています。
勝敗とキルデス比は、どの日も変わらなかった
ここが、この試験でいちばん誤解されやすいところだと思います。
ゲームの成績は3条件で変わっていません。 勝率にも、キルデス比にも、統計的に有意な差は確認されませんでした。
つまりこの試験が示したのは「6分歩くと勝てるようになる」ではありません。示されたのは、机上の課題で測った判断の速さが上がったこと、そのうえでゲームの成績が落ちてはいないこと、この2つです。
歩く休憩を挟んでも、その日の勝率は変わりませんでした。「休むと調子が崩れるから休みたくない」という心配のほうは、この試験の範囲では起きていません。
歩くよりゲームのほうが「きつい」と感じていた
運動の強さは、本人の主観を6から20の目盛りで答えてもらう方式で記録されています。
歩行中の平均は10.5(標準偏差2.8)で、目盛りの上では「楽」にあたる強さでした。息を切らせて歩いたわけではありません。
一方、ゲーム中の主観的な強さは平均13.5(標準偏差1.2)で、「ややきつい」にあたります。著者らはこれを、ゲームがもたらす負荷の大きさを示すものとして書いています。
歩いているときより、ゲームをしているときのほうが、きついと感じていました。6分の歩行は、本人の主観では、ゲームより楽な時間だったということになります。
出口アンケートでは、73.9%の参加者が「6分の歩行はゲームの成績にプラスに働いた」と答えました。あおむけ安静に同じように答えたのは40%未満です。「成績に最も効くのはどれか」という問いには、半数を超える人が歩行休憩を選んでいます。
eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか
休憩を「何分取るか」の問題として考えている方は多いと思います。ただ、この試験で比べられたのは長さではありません。休憩を取った2つの条件はどちらも6分で同じで、変えたのはそのあいだに何をするかだけでした。同じ6分でも、歩いた日と横になった日で、そのあとの判断の速さが逆方向に動いています。
なぜ動かないほうが遅くなるのか。この試験は体の中を測っていないので、仕組みまでは分かっていません。著者らもそう断ったうえで、他の集団で確かめられている話を背景として引いています。デスクワークをしている健康な人15名では、4時間座り続けると脳の主要な動脈(中大脳動脈)の血流の速度が落ちる。ところが30分ごとに2分の軽い歩行を挟むと、その低下が起きなかった、という2018年の研究です。
6分という数字の出どころも書いておきます。著者らが参考にしたのは、座りっぱなしの女性11名を対象に、5時間座り続ける日と、30分ごとに3分ずつやや速めに歩く日を比べた2019年の研究でした。注意と実行機能の一部で改善が報告されています。ただ、30分ごとにゲームを止めるのは現実的ではありません。そこで合計の休憩時間を保ったまま、60分で1回・6分にまとめたというのが、この試験の設計です。
つまり6分は、この試験が最適だと確かめた数字ではなく、先行研究から逆算して置いた数字ということになります。では5分や8分ではどうなのか。そこはまだ分かっていません。
著者らが考察でふれていることが、もう1つあります。「普段から運動しているから、長時間座ることの悪影響は受けない」というのは誤解かもしれない、という指摘です。座りっぱなしを頻繁に区切るほうが、運動量そのものを増やすより健康への効きが大きい可能性がある、と述べています。週末にジムへ行っているかどうかと、平日の夜に2時間座り続けることは、別の話として扱われているわけです。
机上のテストでは差が出たのに、試合の成績は動かない。この組み合わせが出てくるのは、これが初めてではありません。以前本ブログで紹介したカフェインの量とFPSの成績を調べた研究の記事でも、反応の速さは上がったのに命中率は変わらない、という結果でした。測りやすい指標ほど先に動く、と思っておくくらいがちょうどよさそうです。
実際のプレイ環境にどう取り入れるか
ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。体質や持病、服用中の薬によっては当てはまらない場合がありますので、心配な方は医療機関にご相談ください。
1. 休憩の合図を、感覚ではなく時計に持たせる方法があります
試験では、55分の時点で研究者が声をかけ、その試合が終わったところで休憩に入っています。自分で「そろそろ疲れたな」と気づいた人の話ではありません。疲れの自覚は当てにならないことが多いので、プレイを始めるときにタイマーを1時間で置いておく方法があります。
2. 休憩の6分を、横にならずに歩く時間にあてる方法があります
部屋の中を往復するだけで構いません。試験の歩行は主観の目盛りで「楽」にあたる強さで、息を切らせるものではありませんでした。玄関まで往復する、水を汲みに行って戻る、といった動きでも形になると考えます。
3. 休憩中にスマホを見ないと決めておく方法があります
この試験に「座ってスマホを見る」条件はありません。ただ、あおむけ安静の条件でも目は開けたままで、それでも判断は遅くなっていました。画面を替えただけの休憩は、動かない休憩に近いものとして扱うほうが安全だと考えます。
4. 「休むと調子が崩れる」を、いったん脇に置く方法があります
この試験では、休憩を挟んでも勝率もキルデス比も変わりませんでした。休むことで負けが増えるという心配は、少なくともこの範囲では起きていません。まず1回、1時間でいったん立つ日を作ってみる方法があります。
ここで少しだけ、コミュニティのお知らせです。
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この研究から分かること
- Tower of London の解答時間と計画時間は、6分歩いた条件が3条件で最も短く、統計的に有意に速かった(解答時間 p=0.02/計画時間 p=0.04)
- 測定値の並びは、速いほうから「6分の歩行」「休憩なし」「6分のあおむけ安静」の順だった
- 歩行はあおむけ安静にくらべ、解答時間が19.7%、計画時間が22.5%短かった(編集部が論文の平均値から計算)
- Tower of London の正答数、ストループ課題の反応時間と正答率には、統計的に有意な差が確認されなかった
- ゲームの勝率(p=0.6)とキルデス比(p=0.8)にも、統計的に有意な差が確認されなかった
- 主観的な運動の強さは、歩行が平均10.5(「楽」)に対し、ゲーム中が平均13.5(「ややきつい」)だった
- 出口アンケートでは73.9%が歩行休憩を「成績にプラスに働いた」と答え、あおむけ安静では40%未満だった
この研究だけでは分からないこと
著者らは、この試験で何ができなかったかを正直に書き残しています。
- 感染症の流行下でのオンライン実施だったため、客観的な生体データを取れず、運動の強さは自己申告に頼っている
- 検査環境が実験室ではないことが結果に影響した可能性はある。ただし実際のプレイ環境に近い分だけ、現実への当てはまりは高いとも言える
- 勝率とキルデス比に差が出なかったことには、相手やチームメイトの質、マップの違いなど、他の要因も関わりうる
- 実行機能に性別による違いは見られなかったが、長時間プレイによる体の側の変化までは、この集団では調べられていない
ここに、設計上言えることを4つ足しておきます。
この試験に「座ったまま休む」条件はありません。 比べられたのは、歩く・あおむけになる・休まない、の3つだけです。日常でいちばん多いであろう「座ったまま水を飲む」「座ったままスマホを見る」がどちらに近いのかは、この試験からは分かりません。
休憩は2時間のあいだに1回だけです。 著者らも、長期的な意味を知るには複数回の長時間プレイでの検証が要る、と締めています。1日中これを繰り返せば同じだけ効き続ける、とまでは言えません。
盲検化はされていません。 試験登録簿にも「マスキングなし」と記録されています。参加者は自分が歩いたのか横になったのかを当然分かっているので、「歩いたから調子がいいはずだ」という期待が結果に混ざっている可能性を、この設計では切り分けられません。出口アンケートの数字は、とくにこの影響を受けやすいものとして読む必要があります。
解析されたのは21名です。 試験登録簿には参加者数29名(実績)と記録されている一方、論文で解析されたのは21名でした。その差がどこで生じたのかは、論文の本文の記述からは確認できませんでした。
最後に、この記事の範囲の外にある話にも触れておきます。休憩と長時間プレイをめぐっては、血流への影響を調べた別の研究(2024年・競技ゲーマー10名)が「長時間のプレイ中は60分ごとに6分歩くことが望ましい」と結論しています。ただしそれは血液の流れの話であって、判断の速さの話ではありません。一部の著者が共通する別の研究であり、1本の結果として混ぜて読まないほうがよいと考えます。 休憩の最適な量そのものについては、2024年の別の論説が「まだ分かっていない」と述べているのが現状です。
まとめ
同じ6分の休憩でも、歩いた日と横になった日で、そのあとの判断の速さは逆方向に動いていました。そして、どちらの休み方をしてもその日の勝敗は変わっていません。
編集部からの提案は1つだけです。プレイを始めるときに1時間後のタイマーを置き、鳴ったら席を立って6分歩く。 休憩を減らすか増やすかを考える前に、休憩のあいだに立っているかどうかのほうが先に効いてくる、という結果でした。
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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。持病のある方、腰や膝などに痛みのある方、妊娠中の方は、休憩中の運動の可否について医療機関にご相談ください。
参考文献
- DiFrancisco-Donoghue, J., Jenny, S. E., Douris, P. C., Ahmad, S., Yuen, K., Hassan, T., Gan, H., Abraham, K., & Sousa, A.(2021). “Breaking up prolonged sitting with a 6 min walk improves executive function in women and men esports players: a randomised trial” BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 7(3), e001118. doi.org/10.1136/bmjsem-2021-001118
- Chrismas, B. C. R., Taylor, L., Cherif, A., Sayegh, S., & Bailey, D. P.(2019). “Breaking up prolonged sitting with moderate-intensity walking improves attention and executive function in Qatari females” PLOS ONE, 14(7), e0219565. doi.org/10.1371/journal.pone.0219565
- Carter, S. E., Draijer, R., Holder, S. M., Brown, L., Thijssen, D. H. J., & Hopkins, N. D.(2018). “Regular walking breaks prevent the decline in cerebral blood flow associated with prolonged sitting” Journal of Applied Physiology, 125(3), 790–798. doi.org/10.1152/japplphysiol.00310.2018
- Sousa, A., Ahmad, S. L., Hassan, T., Yuen, K., Douris, P., Zwibel, H., & DiFrancisco-Donoghue, J.(2020). “Physiological and cognitive functions following a discrete session of competitive esports gaming” Frontiers in Psychology, 11, 1030. doi.org/10.3389/fpsyg.2020.01030
- DiFrancisco-Donoghue, J., Borges, K., Li, T., Ballone, O., Zwibel, H., & Douris, P. C.(2024). “Reducing thrombotic risks in video gamers: investigating the benefits of walking and compression sleeves on blood hemodynamics” American Journal of Physiology-Heart and Circulatory Physiology, 326(3), H538–H547. doi.org/10.1152/ajpheart.00669.2023
- Manci, E., Theobald, P., Toth, A., Campbell, M., DiFrancisco-Donoghue, J., Gebel, A., Müller, N. G., Gronwald, T., & Herold, F.(2024). “It's about timing: how density can benefit future research on the optimal dosage of acute physical exercise breaks in esports” BMJ Open Sport & Exercise Medicine, 10(4), e002243. doi.org/10.1136/bmjsem-2024-002243
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