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BLOG 悩み解決 2026.08.28 READ 12 MIN

「連敗したらキャラを変える」は逆かもしれない。59万試合の研究

こんにちは、GAME STEP編集部です。

3連敗、4連敗と続くと、そろそろ何か変えたほうがいいのではないか、という気持ちになってくると思います。使うキャラを変えてみる、いつもと違う役割をやってみる。流れを断ち切る方法として、よく聞く手です。

今回取り上げる2024年の研究は、まさにその「連敗したときに人は何を変えているのか」を、大量の試合記録から調べたものです。

結果は、多くのプレイヤーの予想とは異なるものでした。

ランクマッチで負けが込んでくると、だんだん焦ってくると思います。
2連敗くらいならまだしも、3連敗、4連敗と重なると、「このままではまずい、何か変えよう」という気持ちが出てくるのではないでしょうか。

そこでよく行われるのが、使うキャラクターを変えることです。
得意なはずのキャラで負けているなら、いっそ別のキャラに持ち替える。あるいは、いつもと違う役割を担当してみる。

流れを断ち切る方法として、自然な発想だと思います。

2024年に、この「連敗したときに人は何を変えているのか」を、実際の試合記録から調べた研究チームがいます。調べた試合数は、約59万7千試合でした。

結果を先に言うと、連敗中にキャラを変えた人より、変えなかった人のほうがKDAは高くなっていました。

こんな経験はないでしょうか。

  • 連敗すると、とりあえず使うキャラを変えて流れを変えようとする
  • 負けが続いた日に限って、普段はやらない役割に手を出してしまう
  • 「今日はこのキャラと噛み合っていない」と思って持ち替えたが、そのまま負け続けた
  • 連敗のあとは、しばらく時間を空けてから復帰することが多い

この研究では何を調べたのか

今回紹介するのは、フィンランドのタンペレ大学を中心とした研究チームが2024年に発表し、人とコンピュータの関わりを扱う国際会議CHI PLAYで報告された研究です。

出発点にあるのは、スポーツの世界で古くから語られてきた「ホットハンド効果」という考え方です。バスケットボールで「今日は手が熱い」と言われるように、1つの成功が次の成功を呼ぶ、という感覚のことを指します。この感覚がeスポーツでも成り立つのかを、研究チームは実際の試合記録で確かめようとしました。

対象になったのは、League of Legendsというタイトルの韓国サーバーで、上位3%に入るプレイヤー29,898人です。研究チームはこの人たちの直近の試合記録を集め、2023年8月から2024年1月までの計597,680試合を分析しました。韓国サーバーを選んだ理由として、競技レベルが世界で最も高い水準にあることが挙げられています。

調べたのは、大きく3つです。

  1. 連勝・連敗のあと、次の試合の成績は変わるのか
  2. 連勝・連敗が続くと、人は使うキャラや役割を変えるのか。またその選択は成績と結びついているか
  3. 連勝・連敗のあと、次の試合までの間隔は延びるのか。その間隔は成績と結びついているか

成績の指標として使われたのはKDAです。

KDAとは、倒した数と味方を助けた数を、自分が倒された数で割った値のことです。「1回倒される間に、どれだけ戦果を出せたか」を表す数字だと考えると分かりやすいと思います。この研究に含まれる試合の平均は4.05でした。なお、これは個人の戦績を表す数字であり、チームの勝敗そのものではありません。

研究で分かったこと

連敗しても、次の試合の成績はほとんど変わらなかった

まず調べられたのは、連勝・連敗が次の試合のKDAとつながっているかどうかです。

結果は、連勝の場合も連敗の場合も、ほとんど関係が見られませんでした。数字で言うと、連勝との関連は0.006、連敗との関連はマイナス0.019です。

ここで出てくる数字は相関係数と呼ばれ、2つのものがどれくらい一緒に動くかを表します。値はマイナス1から1までの間を取り、0に近いほど関連が弱く、1やマイナス1に近いほど関連が強いことを意味します。プラスなら同じ方向に、マイナスなら反対方向に動く関係です。今回のマイナス0.019という値は、ほぼ無関係と言ってよい大きさです。

研究チーム自身も、この結果について「立てた仮説は支持されなかった」とはっきり書いています。

連敗が続いていること自体は、次の試合の戦績を押し下げる要因としては確認されませんでした。「連敗している=今は腕が落ちている」という感覚は、少なくともこのデータには表れていません。

連敗が続くほど、キャラや役割を変える人が増えた

続いて調べられたのが、連敗中の行動です。

連敗が長引くほど、次の試合で同じキャラを使う人はわずかに減り、同じ役割を担当する人もわずかに減っていました。関連の強さはキャラでマイナス0.030、役割でマイナス0.047です。関連はごく弱いものの、連敗が続くほどキャラや役割を変える傾向が見られました。

負けが続くと手を変えたくなる、という感覚は、59万試合の記録の上にも薄く現れていたことになります。

それでも、変えなかった人のほうがKDAは高かった

ここが、今回特に注目したい結果です。

研究チームは、連敗中にキャラを変えた人と変えなかった人で、KDAの平均を比べました。

  • 連敗中にキャラを変えなかった人(39,408試合)の平均KDAは4.089
  • 連敗中にキャラを変えた人(85,918試合)の平均KDAは3.858

差は0.231で、統計的に有意な差(偶然だけでは説明しにくい差)として確認されました。

同じことは役割についても言えました。

  • 連敗中に役割を変えなかった人(95,986試合)の平均KDAは4.028
  • 連敗中に役割を変えた人(29,340試合)の平均KDAは3.609

こちらの差は0.419です。

連勝中についても比べられていますが、傾向は同じでした。キャラを変えなかった人が4.331に対して変えた人が4.003、役割を変えなかった人が4.235に対して変えた人が3.684です。

連勝中でも連敗中でも、同じキャラ・同じ役割を続けることのほうが、良い成績と結びついていました。研究チームはこの点を「一貫性は全体としてより良い成績と関連していた」とまとめています。

休憩の長さと成績の関係は、確認できなかった

最後に調べられたのが、試合と試合の間隔です。

連勝したあとも連敗したあとも、人は次の試合までにやや長い時間を空けていました。ただし関連はごく小さく、研究チームは「実務的な意味は限られる」と評価しています。

では、その休憩は成績につながっていたのでしょうか。

連敗後については、休憩の長さとKDAの間にわずかな関連が見られましたが、値は0.017です。連勝後にいたっては、統計的に有意な関連は確認されませんでした。研究チームはこの分析についても「仮説は支持されなかった」と結論しています。

つまりこの研究からは、休憩を取れば成績が戻る、とは言えません。連敗後に休憩を挟む人が多かったことと、その休憩が効いていたかどうかは、別の話として分けて読む必要があります。

なお研究チームは、この結果が出た理由の1つとして、データに極端な値が混ざっていた可能性を挙げています。試合の間隔の最大値は133.6日でした。数か月ぶりに復帰した試合まで「長い休憩を取った」として同じ計算に入っているため、休憩の効果を正しく測れていないかもしれない、という説明です。適切な休憩の長さを見つけることは、今後の課題として残されています。

eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか

この結果からは、連敗そのものと、連敗をきっかけに取る行動は、切り離して考えたほうがよさそうです。

連敗している事実は、次の試合の戦績をほとんど予測していませんでした。一方で、連敗中に手を変えたかどうかのほうが、戦績の差としては大きく出ています。

研究チームは、一貫性が成績と結びつく理由について、慣れたキャラを使い続けることが自信を支えるだけでなく、新しいキャラに適応するための頭の負担を減らし、戦略への集中と正確な操作を可能にするからではないか、と考察しています。負けている最中は判断に使える余裕がすでに減っているので、そこへ「不慣れなキャラの扱いを覚える」という仕事を追加することになる、という見方です。

同じ研究チームは、キャラや役割を変えることについて「悪い流れを断ち切る手段としてよく行われるが、必ずしも成績の改善につながるわけではない」とも書いています。

ここで注意が必要なのは、この研究が示しているのは関連であって、原因ではないという点です。変えなかったから強かったのか、もともと強い人が変えないのかを、この数字だけで見分けることはできません。この点は後の節で改めて触れます。

なお、連敗が感情を乱すこと自体は、別の研究で扱われています。以前本ブログで紹介した連敗とティルトの研究では、崩れやすさと最も強く結びついていた感情は怒りであり、有効だった対処は「一時的に注意をそらすこと」でした。今回の研究は、その「注意をそらす」を実際の行動として見たときに、キャラの変更という形では戦績につながっていなかったことを示しています。

実際のプレイ環境にどう取り入れるか

ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。

1. 連敗中は、いつもと違うことを増やさない

この研究が見たのはキャラと役割の2つだけですが、負けている最中に不慣れな要素を足すと判断の余裕が減るという構図は、感度設定や立ち回りにも当てはまると考えられます。連敗中に触るのは、1試合につき1つまで、と決めておく方法があります。

2. 変えたくなったら、その場ではなく手元に書き出す

「このキャラ、もう合っていないかもしれない」という気づき自体は貴重です。ただ、それを連敗の最中に実行すると、慣れていない状態で戦うことになります。気づいたことはメモに残し、落ち着いている日の練習で試す、という順番にすると、思いつきと検証を分けられます。

3. 離席のルールは、負ける前に決めておく

今回の研究では、休憩の長さと成績の関係は確認されていません。ですから「休むと勝てるようになる」とは言えません。それでも、連敗中に判断が荒くなること自体は多くのプレイヤーが経験するところです。「3連敗したら一度立つ」のように、崩れていない時間帯にルールを作っておくと、その場の勢いで決めずに済みます。

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この研究から分かること

  • 連勝・連敗と次の試合のKDAの関連は、連勝で0.006、連敗でマイナス0.019。研究チームは仮説が支持されなかったと結論している
  • 連敗が長引くほど、同じキャラを使う人(マイナス0.030)と同じ役割を続ける人(マイナス0.047)はわずかに減る
  • 連敗中、キャラを変えなかった人の平均KDAは4.089、変えた人は3.858(差 0.231)
  • 連敗中、役割を変えなかった人の平均KDAは4.028、変えた人は3.609(差 0.419)
  • 連勝中も傾向は同じで、キャラは4.331対4.003、役割は4.235対3.684
  • 休憩の長さとKDAの関連は、連敗後で0.017、連勝後では統計的に有意な関連なし

この研究だけでは分からないこと

研究チーム自身が、3つの限界を挙げています。

1つ目は、対象が韓国サーバーの上位3%に限られていることです。腕前の異なる層や、別の地域のプレイヤーで同じ結果になるかは分かりません。2つ目は、成績の指標がKDAだけだという点です。研究チームは、与えたダメージ量や視界の確保といった指標を加えれば、別の関連が見えるかもしれないと書いています。3つ目は、試合記録という外から見える情報だけを使っているため、プレイヤーが何を感じて手を変えたのかまでは分からないことです。

これに加えて、記事として補っておきたい点が4つあります。

関連であって、原因ではありません。 この研究は実際に起きた試合を観察したものなので、「変えなかったから成績が良かった」のか「もともと安定して強い人が変えないだけ」なのかを区別できません。得意なキャラで勝てている人ほど持ち替える理由がない、という説明も同じデータで成り立ちます。

KDAはチームの勝敗ではありません。 KDAが高くても負ける試合はありますし、その逆もあります。

差の大きさは、1試合で体感できるものではありません。 KDAの平均が4.05である中で、差は0.231から0.551です。大量のデータを集めたからこそ確認できた差であり、次の1試合の結果を左右するほどの大きさではありません。

対象はLeague of Legendsです。 5人で役割を分担するタイトルの結果であり、APEXなどのFPSで同じ傾向が出るかどうかは、この研究では調べられていません。

まとめ

連敗中に手を変えたくなるのは自然なことで、実際に多くの人がそうしていました。ただ59万試合の記録の上では、変えなかった人のほうがKDAは高く出ています。

今日からこれだけ、と1つ選ぶなら、連敗中に変更してよいのは1試合につき1つまで、と先に決めておくことです。負けている最中に決めると、たいてい2つ3つと増えていきます。

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練習の量と上達の関係については、以前紹介した「上達のための練習」の時間とランクの関係を調べた研究の記事も合わせてどうぞ。

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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。

参考文献

  1. Deng, D., Trepanowski, R., Li, M., Zhang, Y., Bujić, M., & Hamari, J.(2024). “Streaks and Coping: Decoding Player Performance in League of Legends Using Big Data from Top Players' Matches” CHI PLAY Companion '24: Companion Proceedings of the 2024 Annual Symposium on Computer-Human Interaction in Play, 50–55. doi.org/10.1145/3665463.3678787
WRITER
GAME STEP編集部

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