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BLOG 悩み解決 2026.10.12 READ 9 MIN

eスポーツの燃え尽きは、学生選手313名でストレスと関連していた

こんにちは、GAME STEP編集部です。

大会が近いのに夜はなかなか寝つけず、日中もぼんやりして集中できない。チームメイトとの連携や大会のプレッシャーに気を張り続けて、気力がすり減っていく。

こういう状態を「怠けている」「やる気が足りない」と片づけてしまうことは、少なくないのではないでしょうか。今回取り上げるのは、学生のeスポーツ競技者を対象に、燃え尽きがどんなものと結びついているのかを調べた研究です。

その答えは、多くのプレイヤーの想像とは少し違うものでした。

練習ソフトやスクリムに向かっても、どうも身が入らない。そんな日が続くと、まず疑いたくなるのは自分の気持ちの弱さかもしれません。

ですが、燃え尽きは本当に「やる気の問題」なのでしょうか。それを別の角度から見た研究があります。

こんな心当たりはないでしょうか。

  • 練習に身が入らないのを「自分の甘え」だと思っている
  • 大会前になると眠れず、日中もだるさが抜けない
  • チームの連携やプレッシャーに気を張り続けて、ずっと疲れている
  • 人との関わりを避けたくなることが増えた

この研究では何を調べたのか

調べたのは、Smith らの研究チームです。2022年に学術誌 Healthcare で公開されました。対象は英国の学生eスポーツ競技者313名で、平均年齢は19.8歳(標準偏差2.0)でした。

内訳は女性30名・男性283名です。タイトルは CS:GO が165名、Valorant が68名、Rainbow Six Siege が80名でした。

この研究は一時点のアンケート(横断調査)です。ストレッサーや睡眠、バーンアウト、不安・抑うつといった項目を一度に測り、それらがどう結びついているかを統計的に調べています。

横断調査は、ある一時点でまとめてアンケートを取る方法です。項目どうしの関連や、片方からもう片方をどのくらい予測できるかは見えますが、「どちらが原因でどちらが結果か」までは分かりません。

研究で分かったこと

結果を読む前に、数字の意味を1つ押さえておきます。

「分散の◯%を説明した」という言い方は、ある項目のばらつき(人によって高い・低いがあり、その散らばり具合)のうち、どれくらいを別の要因で説明できたかを表します。「選手の◯%が燃え尽きた」という人数の割合ではありません。

ストレッサーは燃え尽きや睡眠の乱れと関連していた

ストレッサーは、バーンアウトの「達成感の低下」の分散の15.0%、「疲労感(exhaustion)」の分散の18.4%を説明しました。

睡眠との関連も確認されています。ストレッサーは睡眠時間の分散の8.9%、睡眠の乱れの分散の9.3%、日中の機能不全(日中のだるさ・集中力の低下)の分散の14.7%を説明しました。

大会前に気を張り続けるようなストレッサーは、燃え尽きの疲労感や達成感の低下、そして睡眠の乱れと関連していました。「気の持ちよう」だけの問題として片づけにくい結果だと考えられます。

ストレッサーは社会不安や不安・抑うつとも関連していた

ストレッサーは社会不安の「恐怖」の分散の26.6%、「回避」の分散の15.6%、「生理的症状」の分散の15.5%を説明しました。

また、GHQ-12で測った一般的な不安・抑うつ症状の分散の26.4%、心理的苦痛(Distress Screener)の分散の16.3%、より重い抑うつ症状(PHQ-9)の分散の12.7%も説明しています。

ストレッサーは、社会不安や不安・抑うつの症状とも関連していました。ただしこれは一時点の相関・予測関係であり、ストレッサーがこれらを引き起こすと示したものではありません。

睡眠・社会不安・バーンアウトは不安や抑うつの予測因子だった

論文では、睡眠そのものが一般的な不安・抑うつの分散の33.7%、より重い抑うつの分散の49.2%、心理的苦痛の分散の41.4%を説明したと報告されています。

β(標準化回帰係数)は、複数の要因を同時に見たときに、どの要因がどれくらい強く予測に効いているかを相対的に表す数値です。「選手の◯割に当てはまる」という意味ではありません。

中でも日中の機能不全は、一般的な不安・抑うつ(β=0.51)やより重い抑うつ(β=0.61)を強く予測していました。

バーンアウトも予測因子でした。一般的な不安・抑うつの分散の23.4%、より重い抑うつの分散の29.2%、心理的苦痛の分散の17.2%を説明しています。中でも疲労感は、一般的な不安・抑うつ(β=0.45)、より重い抑うつ(β=0.52)、心理的苦痛(β=0.40)の最も強い予測因子でした。

社会不安も、一般的な不安・抑うつの分散の33.2%、より重い抑うつの分散の30.8%、心理的苦痛の分散の32.5%を説明しました。

日中のだるさや燃え尽きの疲労感、社会不安は、不安や抑うつの強い予測因子でした。燃え尽きは単独の問題というより、睡眠や不安とひとつながりになっている可能性が示されています。

eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか

この研究が示したのは、ストレッサー・睡眠・バーンアウト・不安や抑うつが、互いに結びついているという関連です。燃え尽きを「やる気が足りない」「自分が甘いだけ」と個人の問題に押し込めてしまうと、その裏にある睡眠の乱れや社会不安が見えにくくなってしまうのかもしれません。

ただし、これは一時点の横断調査です。「ストレッサーが燃え尽きを引き起こす」「睡眠の乱れが抑うつの原因になる」とは、この研究だけでは言えません。逆に、不安や抑うつが強い人ほど睡眠が乱れやすい、という順番だった可能性もあります。

対象が英国の学生eスポーツ競技者である点も押さえておきたいところです。プロ選手や、ほかのタイトルの競技者全般にそのまま当てはまるとは限りません。

それでも、だるさや燃え尽きが気分の落ち込みと隣り合っているという関連は、自分の状態を見るときの手がかりになるのではないでしょうか。

実際のプレイ環境にどう取り入れるか

ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。

1. 燃え尽きを「怠け」ではなく、状態として眺める方法があります

この研究では、燃え尽きがストレッサーや睡眠の乱れ、社会不安と結びついていました。練習に身が入らないとき、それを「やる気不足」と決めつける前に、睡眠や気の張り詰め方といった周りの状態も一緒に見てみる方法があります。

2. 日中のだるさや集中力の低下に、早めに気づくようにすると考えます

日中の機能不全は、不安や抑うつの強い予測因子でした。大会前夜に寝つけない、日中もぼんやりする、といったサインを「よくあること」と流さず、書き留めておく方法があります。

3. チームメイトとのやり取りや大会のプレッシャーとの向き合い方を、一度立ち止まって考えると考えます

ストレッサーは燃え尽きや社会不安と関連していました。何に一番気を張っているのかを言葉にしておくと、向き合い方を考えるきっかけになるかもしれません。

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この研究から分かること

  • 英国の学生eスポーツ競技者313名(女性30名・男性283名、CS:GO 165名・Valorant 68名・Rainbow Six Siege 80名、平均年齢19.8歳)を対象とした横断調査
  • ストレッサーはバーンアウトの達成感の低下の分散の15.0%、疲労感の分散の18.4%を説明した
  • ストレッサーは睡眠時間の分散の8.9%、睡眠の乱れの分散の9.3%、日中の機能不全の分散の14.7%を説明した
  • ストレッサーは社会不安の恐怖26.6%・回避15.6%・生理的症状15.5%、一般的な不安・抑うつ26.4%、心理的苦痛16.3%、より重い抑うつ12.7%の分散を説明した
  • 睡眠は一般的な不安・抑うつの分散の33.7%、より重い抑うつの分散の49.2%、心理的苦痛の分散の41.4%を説明し、日中の機能不全はβ=0.51・0.61で強く予測した
  • バーンアウトは一般的な不安・抑うつ23.4%・より重い抑うつ29.2%・心理的苦痛17.2%の分散を説明し、疲労感がβ=0.45・0.52・0.40で最も強い予測因子だった
  • 社会不安は一般的な不安・抑うつ33.2%・より重い抑うつ30.8%・心理的苦痛32.5%の分散を説明した

この研究だけでは分からないこと

ここに挙げるのは、研究設計から言える限界です。

  • 一時点の横断調査のため、「ストレッサーが燃え尽きを引き起こす」「睡眠の乱れが抑うつの原因になる」といった因果関係は示せない。逆向きの可能性も残る
  • 対象は英国の学生eスポーツ競技者313名で、タイトルも CS:GO・Valorant・Rainbow Six Siege の3つ。プロ選手やほかのタイトルの競技者全般にそのまま当てはまるとは限らない
  • 女性が30名・男性が283名と偏りがあり、性別による違いまでは読み取りにくい
  • 分散を説明した割合やβは、関連の強さや予測の効き方を表すもので、「◯%の選手が燃え尽きる」といった発生率ではない

まとめ

「燃え尽きは怠けだ」という見方は、この研究の結果とはかみ合いません。学生eスポーツ競技者313名を調べたこの横断調査では、燃え尽きがストレッサーや睡眠の乱れ、社会不安と結びついていました。

練習に身が入らない日が続くなら、「自分が甘いだけだ」と結論を出す前に、ここ数日の睡眠と、何に気を張っていたかを書き留めてみる。それが、次に何を整えるかの手がかりになります。

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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。この研究は英国の学生eスポーツ競技者313名を対象とした一時点の横断調査であり、因果関係を示したものではありません。

参考文献

  1. Smith, M. J., et al.(2022). “The Relationships between Competition Stressors, Sleep, Burnout, and Mental Ill-Health in Esports Athletes” Healthcare, 10(4), 626. doi.org/10.3390/healthcare10040626
WRITER
GAME STEP編集部

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