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BLOG 悩み解決 2026.09.18 READ 11 MIN

エイムのコツ「的に集中」は、37名の実験では支持されなかった

こんにちは、GAME STEP編集部です。

エイムが安定しない日に、何を意識すればいいのか。よく言われるのは「腕ではなく的を見ろ」です。

これは運動の学習を扱う研究で長く支持されてきた考え方で、さまざまなスポーツで同じ結論が出ています。では、その定説はFPSのエイムにも当てはまるのか。それを確かめた実験があります。

その定説は、思っていたようには当てはまりませんでした。

エイム練習ソフトを開いて、30分。数字は昨日とほとんど変わりません。

こういうとき、次に手を伸ばすのはたいてい「意識の持ち方」ではないでしょうか。感度でもマウスでもなく、何に注意を向けるかを変えてみようとする。

そこで出てくるのが「腕を意識するな、的を見ろ」という言い方です。これは思いつきではなく、運動の学習を扱う研究で長く支持されてきた考え方でもあります。自分の体の動きに注意を向けるより、外側の対象に注意を向けたほうが動きは良くなる、という結論が、さまざまな分野で繰り返し確認されてきました。

2023年に、その定説をFPSのエイムで試した実験が発表されています。同じ人に「腕と手首を意識する」条件と「的を意識する」条件の両方をやってもらい、成績を比べるという設計です。

こんな迷い方をしたことがあるかもしれません。

  • エイムが崩れると、意識の持ち方をあれこれ変えてしまう
  • 「脱力しろ」「的だけ見ろ」など、聞いたコツを片っ端から試している
  • 練習ソフトの数字が動かないのに、何を変えればいいのか分からない
  • 上手い人が言っていることを真似しても、自分には効いている実感がない

この研究では何を調べたのか

調べたのは、英国セントアンドリュース大学の心理学神経科学部に所属する2人の研究者です。論文は2023年7月に PLOS ONE で公開されました。

参加者を集めたところ43名が応じ、そのうち6名を除いた37名が分析の対象になりました。平均年齢は21.1歳。全員がPCのFPSを200時間以上プレイしています。

この37名を、経験で2つに分けています。

  • 低経験: 200〜1000時間(17名)
  • 高経験: 1000時間超(20名)

2つのグループのあいだに、年齢の差はありませんでした。

実験はオンラインで行われ、参加者は自分のPCとマウスと回線を使っています。ゲーム側の設定はそろえてあり、武器の画像と音は取り除かれました。

使われた課題は、エイム練習ソフト Aim Lab の「Circleshot」です。

Circleshot は、追いかけ続けるタイプ(トラッキング)の課題です。左クリックを押しっぱなしにして毎秒10発を撃ち続けながら、水平方向に360度動き回る青い球に照準を乗せ続けます。1回の試行は60秒。10回当てると、大きさと速さがランダムに変わった新しい標的が出てきます。

参加者は練習を5回やったあと、本番を10試行×2ブロック=20試行こなします。ブロックごとに、次のどちらかの指示が出ます。

  • 内側に向ける指示: 「腕と手首の動きに注意を向け、追いながら腕と手首をなめらかに動かすようにしてください」
  • 外側に向ける指示: 「標的の動きに注意を向け、追いながら照準をなめらかに動かすようにしてください」

順番は人によって入れ替えられています。

同じ人が両方の条件をやります。上手い人と下手な人を比べているのではなく、同じ人の中で指示だけを変えて比べている設計です。

成績は、1秒あたりの命中数と命中率をかけ合わせた複合スコアで見ています。

研究で分かったこと

注意の向け先では、差が確認されなかった

複合スコアの平均は、外側に向けた条件で13.15、内側に向けた条件で12.87でした。

数字だけ見れば外側のほうがわずかに上ですが、統計的に有意な差ではありませんでした(p=0.397)。効果量もほぼゼロです。

統計的に有意とは、偶然だけでは説明しにくい差が出た、ということを表す言い方です。逆に「有意な差はなかった」は「差がないと確かめられた」という意味ではなく、「今回のデータでは差があるとは言い切れなかった」という意味になります。

効果量は、差が確からしいかどうかとは別に、その差がどれくらい大きいかを表す値です。ここでは0.02で、実質的にはほぼ差が無い水準にあたります。

経験の長さとの組み合わせでも、差は確認されませんでした。高経験グループでの差は0.31、低経験グループでの差は0.23で、どちらも統計的に有意ではありません。

外側に向けたほうがよい、という定説は、この実験では支持されませんでした。 かといって「内側のほうがよい」が示されたわけでもありません。どちらが良いとも言えなかった、というのが正確なところです。

差が出たのは、経験のほうだった

一方で、はっきり差が出たものがあります。経験です。

グループ内側に向けた条件外側に向けた条件
高経験(1000時間超)15.1015.42
低経験(200〜1000時間)10.6410.88

1000時間超のグループのほうが、統計的に有意に高いスコアでした(p=0.002)。効果量も0.25で、注意の向け先の0.02とは桁が違います。

ただしこれは、もともと経験の長い人と短い人を並べて比べただけです。誰かに練習させて上がるところを見たわけではないので、「練習すれば上がる」の証拠にはなりません。

上手い人ほど、言われても外を見ていた

もう1つ、探索的な分析から出てきた結果があります。

実験のあと、参加者は「どちらに注意が向いていたか」を自己申告しています。それを集計すると、参加者全体としては外側へ注意が偏っていました。

ここで細かい話になりますが、大事なところです。この偏りが統計的に有意だったのは、経験の長いグループだけでした(p=0.002)。経験の短いグループでは有意ではありません(p=0.170)。

さらに、3000時間を超える5名は、指示どおりに注意を向けられたかの確認を満たさず、分析から除かれています。

経験の長い人は、「腕を意識してください」と言われても、外側を見てしまっていた。研究チームはここから、長くプレイするうちに注意の向け方が固まってしまい、言われて切り替えるのが難しくなっている可能性を挙げています。

eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか

比べられたのは2つの指示のあいだだけで、「何も意識しない」条件は入っていません。研究チームは、参加者が疲れてしまうことを心配して対照条件を入れなかったと書いています。だから「意識しないのと同じだった」とは言えません。

課題も1種類です。使われたのは動く球を追い続けるトラッキングで、研究チーム自身が「競技FPSでより一般的なクリック中心のエイムには一般化できないかもしれない」と断っています。

では、この結果は何に使えるのでしょうか。「どこを見るか」で悩む価値が、思ったより小さいかもしれない、というところだと思います。

エイムが崩れたとき、意識の持ち方を変えるのは手軽です。設定をいじるより早いし、その場でできる。だからそこに時間を使いやすい。ところがこの実験の範囲では、そこを変えても数字は動きませんでした。動いていたのは経験のほうです。

経験の長い人の結果には、別の読み方もできます。注意の向け方は、意識して選ぶものというより、積み上がってできるものなのかもしれません。上手い人が「的を見ろ」と言うのは、本人がそう決めたからではなく、そうなっていったから、という順番の可能性があります。だとすれば、その言葉だけを真似しても、同じ状態にはなりません。

よく言われる打ち手が効かなかった、という同じ形の話は、以前本ブログで紹介した練習量とランクの関係を調べた研究の記事でも扱いました。あちらでは、練習の量とランクのあいだに統計的に有意な関係が確認されていません(Martončik ら 2024)。「これをやれば上がる」と広く信じられているものほど、調べると出てこない、という並びになっています。

実際のプレイ環境にどう取り入れるか

ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。

1. 「どこを見るか」を練習中に切り替えないでおく方法があります

この実験では、指示を変えても20試行の範囲で差が出ませんでした。試行のたびに意識を変えると、何が効いたのか分からなくなります。1回の練習では1つに決めておく方法があります。

2. 意識ではなく、標的の条件のほうを動かすと考えます

大きさ・速さ・距離といった外側の条件は、変えたことが数字に残ります。「うまく意識できたか」より、「どの条件で崩れるか」を見るほうが確かめやすいと考えます。

3. 上手い人の言葉は、結果であって手順かもしれないと考える方法があります

経験の長い人ほど注意の向け先を切り替えられていませんでした。その人が言う「的を見ろ」は、意識して選んだ手順ではなく、身についた結果を言葉にしたものかもしれません。真似する前に、その人が何を積み上げたのかを聞く方法があります。

4. クリック中心のエイム練習には、この結果を持ち込まないと考えます

調べられたのはトラッキングの課題だけです。フリック中心の練習で同じことが言えるかは分かっていないので、別のものとして扱う方法があります。

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この研究から分かること

  • PCのFPS経験が200時間以上のプレイヤー37名(43名から6名を除外)を、低経験17名と高経験20名に分けた
  • 同じ人に「腕と手首を意識する」指示と「的を意識する」指示の両方を出し、Aim Lab のトラッキング課題を20試行やってもらった
  • 複合スコアは外側13.15・内側12.87で、統計的に有意な差は確認されなかった(p=0.397、効果量0.02)
  • 経験との組み合わせでも差は確認されなかった(p=0.897)
  • 経験による差は確認された。高経験グループが有意に高い(p=0.002、効果量0.25)
  • 参加者全体としては外側へ注意が偏っていた。有意だったのは高経験グループだけ(p=0.002。低経験はp=0.170)
  • 3000時間を超える5名は、注意の向け先の確認を満たさず除外された

この研究だけでは分からないこと

弱点は6つ。すべて著者らが論文の中で自分から挙げているものです。

  • オンラインで行ったため、参加者が自分で環境を用意することになり、統制が弱い
  • 全体で37名と少なく、3000時間を超える人は3名しかいない
  • 経験は自己申告の時間で、正確さに欠ける
  • 「指示なし」の対照条件が入っていない(疲労を心配したため)
  • 課題がトラッキングだけで、クリック中心のエイムには一般化できないかもしれない
  • 注意の向け先の確認に落ちた経験の長い人を除いたことで、高経験グループが偏った可能性がある

さらに3点、この記事の側から付け加えます。

測ったのは1回きりです。 本番は20試行で、時間にすると20分ほど。「その意識の向け方を続けたらどうなるか」は、この設計では分かりません。研究チームも、時間をかけた学習を見る設計を今後の課題に挙げています。

除かれた6名は、集めた43名の約14%にあたります。 しかもその中に、最も経験の長い層が含まれていました。残った「高経験グループ」は、実は上限が削られた集団かもしれません。

注意の向け先の確認は、自己申告です。 研究チーム自身が、確認の文言が指示文とよく似ているため、回答が引っ張られた可能性を挙げています。「指示どおりにできていた」ことが強く確かめられたわけではありません。

まとめ

「腕ではなく的を見ろ」は、運動の学習の研究で長く支持されてきた考え方です。FPSのエイムで試したこの実験では、その差は確認されませんでした。差が出たのは、経験のほうでした。

結局のところ、「どこを見るか」で迷っている時間は、たぶんいちばん効きにくい場所に使われています。

意識の持ち方を探す代わりに、次の練習で1回だけ、標的の大きさか速さを変えて、どの条件から崩れ始めるかを見てみる。 そちらのほうが、次に何を直すかの材料になります。

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逆に、調べたら出てきたものの話も1本あります。同じ100試合でも、間隔の空け方で最後の成績が違っていた研究です。

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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。この実験で調べられたのは、追いかけ続けるタイプのエイム課題1種類のみです。

参考文献

  1. Lamers James, R. G., & O'Connor, A. R.(2023). “Impact of focus of attention on aiming performance in the first-person shooter videogame Aim Lab” PLOS ONE, 18(7), e0288937. doi.org/10.1371/journal.pone.0288937
  2. Martončik, M., Karhulahti, V.-M., Jin, Y., & Adamkovič, M.(2024). “Psychological Predictors of Long-term Esports Success: A Registered Report” Collabra: Psychology, 10(1), 117677. doi.org/10.1525/collabra.117677
WRITER
GAME STEP編集部

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