eスポーツ選手の睡眠効率は67.7%、推奨水準を下回った研究
こんにちは、GAME STEP編集部です。
深夜、試合を終えたばかりの選手がベッドに入っても、なかなか眠りに落ちない。eスポーツに本気で取り組む人なら、こんな経験はないでしょうか。
「睡眠は大事」とはよく言われますが、トップで競う選手が実際にどう眠っているのかを長い期間にわたって測った研究は多くありません。今回取り上げるのは、選手の睡眠を56日間にわたって記録した観察研究です。
そこで見えてきたのは、多くの人が思っているより厳しい睡眠の実態でした。
深夜、試合を終えたばかりの選手がベッドに入っても、なかなか眠りに落ちない。世界中の対戦相手と戦うため、画面の光を浴びながら夜更けまでキーボードをたたく音だけが部屋に響く。
負けた試合の場面が頭から離れず、ベッドの中で何度も展開を思い出してしまう。そんな夜が増えていくうちに、自分の睡眠が良いのか悪いのか、判断する基準すら分からなくなっていく。
こんな心当たりはないでしょうか。
- 試合が深夜まで続き、気づくと寝るのがいつも明け方になっている
- ベッドに入っても、負けた試合が頭に残って寝つけない
- 睡眠時間はそれなりに取っているつもりなのに、日中のだるさが抜けない
- 自分の睡眠が良いのか悪いのか、そもそも判断する基準がない
この研究では何を調べたのか
調べたのは、Moen らの研究チームです。論文は Frontiers in Sports and Active Living で2022年に公開されました。
参加したのは、カウンターストライクの選手27名です。平均年齢は18½歳でした。
睡眠は Somnofy という睡眠モニターを使い、56日間にわたって測定されました。あわせて、選手が週ごとに自分の試合成績を報告しています。
測ったのは、同じ選手たちの睡眠を2か月近く記録した観察研究です。誰かに何かをさせて変化を見た実験ではないので、原因と結果を確かめる設計ではありません。
研究で分かったこと
睡眠効率が低く、就寝も起床も遅かった
選手たちの睡眠効率は平均67.7%でした。これは推奨される85%超の水準を有意に下回り、他競技の選手の水準も下回っていました。
睡眠効率とは、ベッドで入眠してから起きるまでの時間のうち、実際に眠っていた時間の割合のことです。眠っていた時間そのものの長さである総睡眠時間とは別の指標で、睡眠効率が低いからといって睡眠時間が短いとは限りません。
総睡眠時間は平均07:12でした。就床は02:09、起床は10:10と、どちらも遅い時間帯です。入眠までにかかった時間(睡眠潜時)は平均0:57でした。
眠りの内訳は、浅い睡眠が55.1%、深い睡眠が20%、REM睡眠が24.9%という配分でした。
この年代の一般的な人に推奨される睡眠時間は7–9時間、伝統的なスポーツの選手では9–10時間とされます。総睡眠時間07:12は、一般向けの推奨の下限にあたる長さです。
睡眠効率67.7%は、推奨される85%超を下回っていました。ただしこれは眠れた割合の話で、総睡眠時間07:12とは別の指標です。
選手は自分の睡眠に満足していなかった
主観的な睡眠満足度は平均3.37、寝つきの苦労は平均3.15でした(いずれも最大5)。著者は、選手たちが自分の睡眠に不満を持ち、寝つきにも苦労していたとまとめています。
数字の上でも、本人の実感の上でも、睡眠は良い状態とは言いにくかったことになります。
成績が良い選手ほど、睡眠が長かった
個人間のレベルで見ると、試合成績が良い選手ほど総睡眠時間が長く(r=0.55)、NREM睡眠中の呼吸数が低いという相関が見られました(r=−0.44)。
相関係数(r)は、2つの数字がどれくらい一緒に動くかを表す値です。マイナス1から1までの間を取り、0に近いほど関連が弱く、1やマイナス1に近いほど関連が強い関係を表します。プラスなら同じ方向に、マイナスなら反対方向に動きます。
ただし、これは27名を観察して出てきた相関であって、因果関係ではありません。「よく眠れば成績が上がる」「好成績が睡眠を良くする」のどちらかを示したものではない、という点には注意が必要です。
時間の前後を踏まえた分析(クロスラグ分析)では、ある週の試合成績が翌週の起床時刻(睡眠オフセット)を予測する関係が、統計的に有意に確認されました(−0.22)。
統計的に有意とは、偶然だけでは説明しにくい差や関連が出た、ということを表す言い方です。
著者は、成績が良かった週の翌週に、選手がより深く眠り、浅い睡眠が減り、就床時間が短くなり、早く起きる傾向があったとまとめています。ただし、この分析から出た多くの数値(標準化推定値)について、著者自身が「仮説的な母集団へ一般化するためには使えず、今回のサンプル内の関連を示すに過ぎない」と注意しています。
成績と睡眠の間に関連は見られましたが、27名の観察で、因果ではありません。一般化できる形で有意だったのは、試合成績が翌週の起床時刻を予測した関係だけでした。
eスポーツプレイヤーにとって何を意味するのか
この研究が描いたのは、深夜まで試合をして、遅く起き、眠りの質にも本人が満足できていない、という選手像だと思います。著者は、試合が世界中のあらゆる時間帯の相手と行われることが、就寝が遅くなる背景かもしれないと述べています。
成績と睡眠の関連については、著者は試合成績が悪かったことへのネガティブな反応が、その後の睡眠に影響した可能性を提案しています。負けた試合を引きずることが眠りに響く、という読み方です。ただ、相関と前後関係から導かれた解釈であって、原因と結果が確かめられたわけではありません。睡眠が崩れたことが成績に響いた可能性も残ります。
eスポーツに置き換えると、睡眠は「時間を削れば練習にまわせる部分」として最初に削られやすい一方で、本人の満足度まで下がっている領域だと考えられます。
実際のプレイ環境にどう取り入れるか
ここから先は、研究で直接検証されたものではなく、GAME STEP編集部が実践の一例として提案するものです。効き方には個人差があります。
1. 試合を終えたあと、画面から離れる時間を作る方法があります
この研究はブルーライト対策などの介入を検証していません。それでも、試合を終えてすぐ画面を見続けるのではなく、就寝準備の前に光から離れる時間を作る方法があります。
2. 寝つきにかかった時間や満足度を記録して、傾向を把握すると考えます
研究では、寝つきの苦労や満足度を本人が報告していました。同じように、寝つきにかかった感覚や朝の満足度を簡単にメモして、自分の傾向を把握すると考えます。
3. 負けた試合の振り返りを長く続けず、切り替える時間を設ける方法があります
著者は、成績への反応が睡眠に影響した可能性を考察で推測しているだけで、具体的な切り替え方法は検証していません。その推測を実践に落とし込む一例として、負けた試合の振り返りを長く続けず、気持ちを切り替える時間を意識的に設ける方法があります。
ここで少しだけ、コミュニティのお知らせです。
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この研究から分かること
- カウンターストライクの選手27名(平均年齢18½歳)の睡眠を、Somnofy睡眠モニターで56日間測定した
- 睡眠効率は平均67.7%で、推奨される85%超を有意に下回った
- 総睡眠時間は平均07:12、就床02:09、起床10:10、睡眠潜時0:57だった
- 眠りの内訳は、浅い睡眠55.1%・深い睡眠20%・REM睡眠24.9%だった
- 主観的な睡眠満足度は平均3.37、寝つきの苦労は平均3.15で、選手は自分の睡眠に満足していなかった
- 個人間では、成績が良い選手ほど総睡眠時間が長く(r=0.55)、NREM呼吸数が低い相関が見られた
- クロスラグ分析で、試合成績が翌週の起床時刻を有意に予測した(−0.22)
この研究だけでは分からないこと
まず、著者らが論文の中で挙げている限界があります。
- 参加者が27名と少なく、著者も有意な関連を見つける検出力に影響した可能性を挙げている
- 全データの18%が失われている。これは主に地域のWi-Fi接続の技術的な問題によるもので、選手の睡眠行動や意欲の問題ではない
- クロスラグ分析の標準化推定値は、著者自身が「本サンプル内の関連を示すに過ぎない」と注意している
次に、研究の設計から言えることを付け加えます。
これは観察研究です。成績と睡眠の間に相関は見られましたが、「よく眠れば成績が上がる」「好成績が睡眠を良くする」といった原因と結果の向きは、この設計では確かめられません。どちらが先だった可能性も残ります。
対象も特定のタイトルの選手27名で、ここで見えた睡眠の傾向をそのまま全てのeスポーツ選手に当てはめられるわけではありません。
まとめ
選手の睡眠効率は67.7%で、推奨される85%超を下回っていました。総睡眠時間も推奨の下限にあたる長さで、本人も自分の睡眠に満足していませんでした。成績との間には相関が見られましたが、原因と結果が確かめられたわけではありません。
今日からできることを1つだけ挙げるなら、試合を終えたら、画面から離れる時間を作ってから眠りにつく、という行動です。意識や気合ではなく、寝る前の環境のほうを先に整える、という切り口です。
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停滞や伸び悩みに悩むプレイヤーに向けて、90分のマンツーマンセッションと、日々のチャット相談・宿題の設計で上達を伴走しています。
睡眠のような土台の部分は、練習時間を増やすより先に崩れやすく、しかも本人には気づきにくい場所だと考えています。上達が止まっているとき、足りないのは新しいコツではなく、生活とプレイ環境のどこが崩れているかを見つける作業であることが多いと考えています。
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※本記事は紹介した研究で示された知見の解説であり、効果を保証するものではありません。実践案の効き方には個人差があります。この研究は特定のタイトルの選手27名を対象とした観察研究であり、因果関係を示したものではありません。
参考文献
- Moen, F. ら(2022). “Sleep Characteristics in Esport Players and Associations With Game Performance: A Multilevel Analysis” Frontiers in Sports and Active Living. doi.org/10.3389/fspor.2021.697535
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